幸せな夏の思い出の一品

今年も暑い暑い夏がやってきました。我が家ではこの時期に必ず1週間に1回はテーブルに上る一品のトマトパスタ。
作り方は、いたって簡単。トマトの皮をむいて刻んでポン酢につけ、ゆでたてのおそうめんをあえるだけ。オリーブオイルをかけていただけば、こんな暑い休日にはぴったりの一品です。

このレシピは、子供が幼い頃、当時のママ友から教わったものです。ご主人は有名アーティスト、ご自身も独身時代は女優でしたが、結婚してからはしっかり家を切り盛りし、お料理の腕前もなかなかのものでした。
ある夏の日、彼女の家にお招きを受け、さあどんなおうちなんでしょうと、ドキドキしながら向かいました。着いた所は、有栖川公園の緑が美しく映える築30年ほどの数寄屋造り。玄関の前には私たちを歓迎する打ち水が。
都心とは思えないほどひっそりとした旅館のような佇まい。

 

こんなイメージでした。(リッツカールトン京都)

玄関引き戸を開けると、和風の廊下にはガレのランプと使い込まれたペルシャ絨毯が、経年して少し色のついたタモ材によく馴染んでいました。

ダイニングにはローストビーフやサラダなどたくさんの手料理が美しく用意されていました。
家具好きの私はダイニングチェアにも一目惚れ。編み込まれている革紐のなんと素敵だったこと。後にインテリアの勉強を始めてから、それが川上元美さんのNTチェアであったことを知りました。
そして楽しい食事の終わりにささっと作ってくれたのが、このトマトパスタ。美味しいのに無駄のないシンプルなメニューは、その日から、毎年夏に我が家の食卓にも上がるようになりました。

あれから子供たちもそれぞれ独立し、ママ友の会もいつしか自然解散となりましたが、美しい家の夏の思い出は、我が家のテーブルにしっかりと刻まれています。
ありがたいことに、あの頃ご近所やママ友の家で見た丁寧で素敵な暮らしが、今の私の仕事のベースになっています。

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